この記事の要点
介護保険の要介護認定を受けただけでは、税金の障害者控除の対象にはなりません。65歳以上で、障害の程度が障害者に準ずるとして市区町村長や福祉事務所長の認定を受けた人は、障害者控除の対象になります(国税庁「No.1185 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について」、国税庁「No.1160 障害者控除」)。この認定を受けた時に、市区町村から届く書類が「障害者控除対象者認定書」です。
- 控除の額は、障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円です(国税庁「No.1160 障害者控除」)。
- 認定の基準は、市区町村が決めています。 たとえば江東区は、要介護4か要介護5の人を特別障害者に準ずる人としています(江東区「高齢者の方に対する税法上の障害者控除について」)。
- 申請の時期も、市区町村で違います。 船橋市は原則として対象の年の11月から受付、12月から発行です。江東区は、令和8年分は令和9年1月以降に申請するよう案内しています(船橋市「障害者控除対象者認定書を交付します」、江東区・同上)。
- 年末調整に間に合わなくても、確定申告で受けられます。 引かれすぎた税金を取り戻す還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間出せます(国税庁「No.2030 還付申告」)。
今すぐやること3つ
- 親の介護保険の被保険者証で、要介護度を確かめます(手順1)。
- 親が住む市区町村のホームページで「障害者控除対象者認定」を調べ、基準と申請の時期を見ます(手順2〜3)。
- 親本人と子どものどちらの税金から差し引くかを、家族で決めます(手順5)。
まず知っておくこと|要介護認定と障害者控除は別のもの
要介護認定は、介護保険のサービスを使うための認定です。障害者控除は、税金を計算する時に、所得から一定の額を差し引けるしくみです。この2つは、別の制度です。

要介護認定だけでは対象外
国税庁は「介護保険法の要介護認定を受けられただけでは障害者控除の対象とはなりません」としています(国税庁「No.1185 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について」)。要介護認定の結果の通知が届いても、それだけで税金が安くなるわけではありません。
65歳以上で、市区町村長や福祉事務所長の認定を受けた人は対象
障害者控除の対象には、精神または身体に障害のある65歳以上の人で、障害の程度が障害者に準ずるものとして、市区町村長や福祉事務所長の認定を受けている人が含まれます。特別障害者に準ずると認定された人は、特別障害者になります(国税庁「No.1160 障害者控除」)。
国税庁は、この認定について「お住まいの市区町村の窓口にお尋ねください」としています(国税庁「No.1185」)。そのため、このあとの手順は、市区町村の案内を見ながら進めます。
認定書は、税金のための書類
障害者控除対象者認定書は、税金の控除を受けるための書類です。船橋市は、福祉サービスの利用を証明するものではないとしています(船橋市「障害者控除対象者認定書を交付します」)。江東区も、税法上の区分を判定するもので、実際の障害の区分を認定・証明するものではないとしています(江東区「高齢者の方に対する税法上の障害者控除について」)。
控除の金額|障害者27万円・特別障害者40万円・同居特別障害者75万円
障害者控除の額は、区分ごとに決まっています(国税庁「No.1160 障害者控除」)。
| 区分 | 控除の額 |
|---|---|
| 障害者 | 27万円 |
| 特別障害者 | 40万円 |
| 同居特別障害者 | 75万円 |
「同居特別障害者」とは
同居特別障害者は、特別障害者である同一生計配偶者(生計を一にする配偶者で、所得が一定以下の人)または扶養親族のうち、納税者本人、配偶者、納税者と生計を一にするほかの親族のいずれかと、ふだんから同居している人です(国税庁「No.1160 障害者控除」)。
判定するのは、その年の12月31日
江東区と船橋市は、認定の基準日を、控除を受ける年の12月31日としています。船橋市は、年の途中で亡くなった時は、亡くなった日を基準日にするとしています(江東区、船橋市)。
手順1|親の要介護度と、障害者手帳の有無を確かめる
最初に、親がいまどの状態にあるかを、手元の書類で確かめます。進む道は3つに分かれます。

介護保険の被保険者証で要介護度を見る
要介護度は、介護保険の被保険者証に書かれています。江東区は、要介護1〜5の認定を受けている65歳以上の人を、認定の対象にしています(江東区「高齢者の方に対する税法上の障害者控除について」)。要介護1〜5の人は、手順2の基準を見て、認定の申請へ進みます。
障害者手帳を持っている時
江東区は、障害者手帳を持っている人は、その手帳で控除を受けられるとしています(同上)。障害者手帳を持っている時は、まず手帳で控除を受けられるかを確かめます。船橋市は、身体障害者手帳などを持っていて特別障害者の控除を受けられる人は、認定書の対象にならないとしています(船橋市「障害者控除対象者認定書を交付します」)。
要介護認定を受けていない時
船橋市は、基準日に要介護認定を受けていない人でも、医師の調査書を出せば審査を受けられるとしています。医療機関によっては、調査書を作るのに費用がかかることがあります(同上)。要介護認定を受けていない時は、先に市区町村の窓口へ電話で相談します。
手順2|市区町村の基準を調べる(江東区の例)
認定の基準は、市区町村のホームページに載っています。検索する時は「市区町村名 障害者控除対象者認定」と入れます。
江東区の基準
下の表は、江東区の基準を短くまとめたものです(江東区「高齢者の方に対する税法上の障害者控除について」)。
| 控除の区分 | 江東区の認定基準(要旨) |
|---|---|
| 特別障害者 | 要介護4または要介護5の認定を受けている |
| 特別障害者 | 要介護1〜3の認定を受けていて、認知症高齢者の日常生活自立度がⅢa、Ⅲb、ⅣまたはM |
| 特別障害者 | 要介護1〜3の認定を受けていて、障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)がBまたはC |
| 特別障害者 | 常に就床を要し、複雑な介護を要する状態(寝たきり高齢者) |
| 障害者 | 要介護1〜3の認定を受けていて、認知症高齢者の日常生活自立度がⅡaまたはⅡb |
| 障害者 | 要介護1〜3の認定を受けていて、障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)がA |
基準は市区町村ごとに違う
この表は江東区の基準です。ほかの市区町村では、見る項目や組み合わせが違うことがあります。親が住む市区町村の案内を、必ず見てください。介護施設に入っている時は、申請先が施設のある市区町村になる場合もあります。江東区は、江東区の介護保険に入っていて「住所地特例施設」に入所している人には、施設がある自治体に申請するよう案内しています(同上)。
自立度は、家族が自分で決めない
表にある「日常生活自立度」は、要介護認定の調査などで記録されるものです。船橋市は、介護保険の認定調査で作られた資料などをもとに審査するとしています(船橋市「障害者控除対象者認定書を交付します」)。家族が表を見て「うちは当てはまらない」と決めず、まず申請して判定してもらいます。
手順3|申請の時期を確かめる
いつから申請できるかは、市区町村によって違います。ここで年末調整に使えるかどうかも変わってきます。

年内に受け付ける市と、年明けに受け付ける区
船橋市は、原則として、対象の年の11月から受付、12月から発行です。受け付けてから交付まで、おおむね2週間かかり、その場では発行できないとしています(船橋市「障害者控除対象者認定書を交付します」)。
江東区は、令和8年分(2026年分)は、令和9年1月以降に申請するよう案内しています(江東区「高齢者の方に対する税法上の障害者控除について」)。
認定書は、その年の分ごとに使う
船橋市は、認定書は基準日の年の申告に限って有効としています(船橋市)。去年の認定書を、今年の申告にそのまま使うことはできません。毎年、その年の分を確かめます。
年の途中で亡くなった時
船橋市は、対象の年の途中で亡くなった時は、亡くなった日を基準日にするとしています(同上)。亡くなった親の分も、市区町村に相談できます。
手順4|申請書を出す(窓口・郵送)
申請書は、市区町村の窓口やホームページで手に入ります。江東区も船橋市も、ページから申請書を入手できます(江東区、船橋市)。
窓口で出す時の持ち物(江東区の例)
- 申請書
- 対象者の介護保険証、または本人確認書類
- 申請する人の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 成年後見人などが申請する時は、登記事項証明書
郵送で出す時
江東区は、郵送でも受け付けています。この場合は、申請書と、対象者の介護保険証か本人確認書類の写し、申請する人の本人確認書類の写し、切手をはって送り先を書いた返信用封筒を入れます(同上)。船橋市も、郵送とオンラインでの申請を受け付けています(船橋市)。離れて暮らす子どもでも、郵送なら手続きを進めやすくなります。
家族が代わりに出す時
船橋市は、本人か親族が申請でき、それ以外の人が申請する時は委任状が必要としています(同上)。代わりに出せる人の範囲は市区町村で違うので、申請書の注意書きを見ます。
結果は「認定書」か「非該当通知書」で届く
江東区では、認定された人には「障害者控除対象者認定書」が、認定に至らなかった人には「障害者控除対象者非該当通知書」が交付されます(江東区)。届いた書類は、申告が終わるまで大切にしまいます。
手順5|誰の税金から差し引くかを決める
障害者控除は、納税者自身、同一生計配偶者、扶養親族のいずれかが障害者に当てはまる時に受けられます(国税庁「No.1160 障害者控除」)。親の分をどこで差し引くかは、家族の状況で変わります。

親本人が受ける時
親本人に年金などの所得があり、税金が引かれている時は、親本人が自分の分として障害者控除を受けられます。夫婦の場合は、配偶者が、同一生計配偶者である相手の分として受けることもあります(同上)。
子どもが受ける時
子どもが親を扶養親族にしている時は、子どもの税金から、親の分の障害者控除を差し引けます。親を扶養親族にするには、親と生計を一にしていることや、親の年間の合計所得金額が58万円以下であることなどの条件があります(国税庁「No.1180 扶養控除」)。
同居していると75万円になる場合
親が特別障害者で、子どもの扶養親族として子どもや家族とふだんから同居している時は、同居特別障害者として75万円になります(国税庁「No.1160 障害者控除」)。同居かどうかで額が変わるので、家族で暮らし方を確かめておきます。
手順6|年末調整か確定申告で申告する
会社員の子どもは、勤め先の担当者に確かめる
会社員の子どもが親の分を年末調整で受ける時は、勤め先に出す「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で申告します。この申告書は、給与について扶養控除などの控除を受けるための手続きです(国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」)。

ただし、認定書を年末調整に使えるかは、市区町村によって扱いが違います。江東区は、認定書は確定申告と修正申告に使うもので、年末調整には使えないとしています(江東区)。勤め先の担当者に、年末調整で申告できるか、何を見せればよいかを確かめます。
年金を受け取る親本人は、確定申告か扶養親族等申告書
年金から所得税が引かれている親本人は、確定申告で障害者控除を申告できます。また、日本年金機構に出す扶養親族等申告書には「本人障害」の欄があり、「普通障害」か「特別障害」かを選びます(日本年金機構「扶養親族等申告書の記入項目について」)。
日本年金機構は、この区分は介護保険の要介護認定の等級とは直接関係がないとしています。わからない点は、年金事務所か税務署に問い合わせるよう案内しています(同上)。扶養親族等申告書そのものの書き方は、扶養親族等申告書の書き方|対象拡大7ステップで説明しています。
年末調整に間に合わない時は確定申告
認定書が年明けに届いても、確定申告で障害者控除を受けられます。確定申告をしなくてよい人でも、引かれた税金が多すぎた時は、還付申告をして取り戻せます(国税庁「No.2030 還付申告」)。
年金を受け取る人の確定申告の準備は、シニアの年金・確定申告をChatGPTで乗り切る完全ガイドにまとめています。
手順7|過去の年の分を取り戻す
これまで障害者控除を受けていなかった年があっても、あきらめる必要はありません。
年ごとに申請書を出す(船橋市の例)
船橋市は、前の年より前の分も、過去5年分まで、いつでも申請できるとしています。何年分かをまとめて申請する時も、年ごとに別の申請書が必要です(船橋市「障害者控除対象者認定書を交付します」)。
還付申告は5年以内
還付申告書は、確定申告の期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間出せます(国税庁「No.2030 還付申告」)。すでに確定申告をした年の分を直す時の手続きは、税務署に確かめます。
AIに聞くときは、名前と番号を伏せる
市区町村の案内は、言葉がかたくて読みにくいことがあります。ChatGPTなどのAI(人工知能)に、案内の文をそのままはり付けて、やさしい言葉にしてもらう使い方ができます。
聞き方の例
これは市役所の「障害者控除対象者認定」の案内文です。
(ここに案内文をはり付ける)
70代の親と、離れて暮らす子どもが読むことを考えて、
申請に必要なもの、出す場所、いつから出せるかを、
短い箇条書きにしてください。
要介護3の親を扶養しています。
勤め先の年末調整の担当者に、障害者控除について確かめたいです。
聞くことを3つ、ていねいな言葉でまとめてください。
AIの答えは、市区町村と国税庁の案内と見くらべてから使います。認定されるかどうかや、税金がいくら安くなるかは、AIに決めてもらいません。
AIに送らないもの
親の氏名、住所、生年月日、介護保険の被保険者番号、マイナンバー、認定書や被保険者証の写真は、AIに送りません。
離れて暮らす家族ができること
- 帰省した時に、親の介護保険の被保険者証で要介護度を確かめておきます(手順1)。
- 親が住む市区町村の申請書を印刷して、郵送で出す準備をします(手順4)。
- 年末調整の時期より前に、勤め先の担当者に、障害者控除の扱いを聞いておきます(手順6)。
- 介護のお金の負担を軽くするほかのしくみも、あわせて確かめます。施設の食費と居住費は介護施設の食費・居住費を安く|負担限度額認定7手順、介護保険料は65歳以上の介護保険料はいくら|10月に変わるで説明しています。
よくある質問
Q. 親が要介護認定を受けました。それだけで障害者控除になりますか?
なりません。国税庁は、要介護認定を受けただけでは障害者控除の対象にならないとしています。市区町村長などの認定を受けると、対象になります(国税庁「No.1185」)。
Q. 控除の額はいくらですか?
障害者は27万円、特別障害者は40万円、同居特別障害者は75万円です(国税庁「No.1160 障害者控除」)。
Q. いつから申請できますか?
市区町村で違います。船橋市は原則として対象の年の11月から受付、江東区は令和8年分を令和9年1月以降に受け付けます(船橋市、江東区)。
Q. 認定書は年末調整で使えますか?
市区町村によって扱いが違います。江東区は、年末調整には使えないとしています(江東区)。使えない時は、確定申告で障害者控除を受けます。
Q. 去年より前の分も受けられますか?
船橋市は、過去5年分まで申請できるとしています(船橋市)。還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間出せます(国税庁「No.2030 還付申告」)。
Q. 親は今年亡くなりました。認定は受けられますか?
船橋市は、年の途中で亡くなった時は、亡くなった日を基準日にするとしています(船橋市)。親が住んでいた市区町村に相談します。
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参考・出典
- 国税庁「No.1160 障害者控除」(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月12日確認)
- 国税庁「No.1185 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について」(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月12日確認)
- 国税庁「No.1180 扶養控除」(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月12日確認)
- 国税庁「No.2030 還付申告」(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月12日確認)
- 国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(2026年10月12日確認)
- 日本年金機構「扶養親族等申告書の記入項目について」(2026年9月3日更新・2026年10月12日確認)
- 江東区「高齢者の方に対する税法上の障害者控除について」(2026年9月24日更新・2026年10月12日確認)
- 船橋市「障害者控除対象者認定書を交付します」(2026年4月1日更新・2026年10月12日確認)