結論: 警察官を名乗る電話で「あなたの口座が犯罪に使われている」「あなたは捜査の対象です」と言われたら、それは「ニセ警察詐欺」と呼ばれる詐欺です。警察庁が2026年7月31日に発表した最新の統計(令和8年上半期・暫定値)によると、ニセ警察詐欺の被害額は半年間で507.9億円。年代別では70代の被害が最も多くなっています。でも、見抜き方はシンプルです。本物の警察官が「絶対にしないこと」を7つ覚えておけば、電話の途中で気づけます。
この記事の要点:
- 要点1: 本物の警察官は、電話で「あなたが捜査対象」と告げたり、LINEなどのビデオ通話に誘導したり、警察手帳や逮捕状の画像を見せたりしません。この時点で詐欺と判断できます
- 要点2: 電話の画面に警察署の番号が表示されていても信用できません。番号は偽装できるからです。迷ったら一度切って、自分で調べた警察署の番号か、警察相談専用電話「#9110」にかけ直しましょう
- 要点3: 備えとして、警察庁が2026年3月に初めて認定した無料の「警察庁推奨アプリ」(詐欺対策アプリ)をスマホに入れておく方法があります。電話のあとの不安は、ChatGPT(チャットジーピーティー)を「相談相手」にして整理できます
対象読者: 固定電話やスマホに知らない番号から電話がかかってくることがある60〜80代の方。そして「親が変な電話を受けていないか心配」という子世代・孫世代の方。
読了後にできること: 警察官を名乗る電話を受けたとき、「本物か、ニセモノか」を7つのチェックで見分けられるようになります。電話を切ったあとの相談先と、家族での備え方も分かります。
「こちら警察ですが、あなたの口座が犯罪に使われています」
想定シナリオですが、こんな場面を思い浮かべてみてください。週明けの月曜日、お昼前の静かな時間に電話が鳴ります。相手は落ち着いた声で警察官を名乗り、あなたの名前も知っています。「詐欺グループを逮捕したら、あなた名義のキャッシュカードが出てきました。このままではあなたも捜査の対象になります」——。心臓がドキッとして、頭が真っ白になる。これが、ニセ警察詐欺の入口です。
警察庁の特殊詐欺対策ページ(SOS47)は、この手口を「警察官等をかたり、捜査名目で現金等をだまし取る手口」と説明しています。この記事では、最新の被害データと手口の流れ、そして「本物の警察がしない7つのこと」を、やさしい言葉で順番にご紹介します。
ニセ警察詐欺とは|7月31日発表の最新データで見る今
ニセ警察詐欺は、警察官や検察官などを名乗って電話をかけ、「捜査に必要」という名目でお金をだまし取る詐欺です。警察庁は2026年(令和8年)から、この手口を独立した統計項目として集計を始めました。それだけ被害が深刻だ、ということです。
2026年7月31日に警察庁が発表した令和8年上半期(1〜6月)の統計(暫定値)から、主な数字を見てみましょう。
| 項目 | 令和8年上半期の数字 |
|---|---|
| 特殊詐欺全体の被害総額 | 1,816.2億円(前年同期比+51.7%) |
| 1日あたりの被害額 | 約10億円 |
| ニセ警察詐欺の被害額 | 507.9億円(前年同期比+27.3%) |
| ニセ警察詐欺の認知件数 | 4,466件 |
| ニセ警察詐欺の1件あたり被害額(既遂) | 約1,163.9万円 |
注目したいのは年代別の数字です。ニセ警察詐欺の認知件数は70代が869件と最も多く、前年同期から51.4%も増えています。被害額も70代が151.6億円と最多で、60代の116.3億円が続きます。一方で、20代・30代の被害も1,200件を超えており、「若い人でもだまされる巧妙な手口」であることが分かります。
特殊詐欺全体では、65歳以上の方の被害が9,230件・817.8億円と、被害総額の46.0%を占めています。「自分は大丈夫」と思っている人ほど危ない、と警察庁も繰り返し注意を呼びかけています。
だましの流れは3段階|電話→ビデオ通話→「資産保護」の振込
警察庁SOS47と警視庁の公式ページで紹介されている手口を、3つの段階に整理します。ニセ警察詐欺の入口は、98.2%が「電話」です。
段階1: 突然の電話で不安にさせる
「あなたの口座が犯罪に使われている」「あなたの携帯電話が不正に契約された」「あなたに逮捕状が出ている」——。こうした言葉で、いきなり不安に突き落とします。電話の画面に、実在する警察署の番号や警視庁の代表番号(03-3581-4321)が表示されることもありますが、これは番号の偽装です。「+」から始まる国際電話番号で、末尾を「0110」にして警察の番号に見せかける例も確認されています。
段階2: LINEのビデオ通話に誘導し、ニセの手帳や逮捕状を見せる
次に犯人は「捜査のため」と言って、LINE(ライン)などのビデオ通話へ誘導します。画面越しに制服姿の人物が現れ、ニセの警察手帳や、あなたの実名が書かれた逮捕状を見せてきます。そして「捜査の内容は誰にも話してはいけない」と口止めし、「協力しないと長期間勾留される可能性がある」と脅します。
想定シナリオですが、ここまで来ると多くの方が「本物かもしれない」と思ってしまいます。画面の向こうに制服と手帳が見えるのですから、無理もありません。だからこそ、「ビデオ通話に誘導された時点で詐欺」と覚えておくことが大切です。
段階3: 「資産を保護する」名目でお金を振り込ませる
最後は「身の潔白を証明するため、口座の資金を確認する必要がある」「資産を保護するので指定口座に移してください」という流れでお金を振り込ませます。最近は現金の振込だけでなく、暗号資産(インターネット上のお金)を送らせる手口が急増しており、警察庁の統計では暗号資産がらみの被害がニセ警察詐欺の被害額の約24%を占めています。
本物の警察がしない7つのこと|1つでも当てはまれば詐欺
ここからが本題です。警察庁と警視庁が公式に案内している「本物の警察官はしないこと」を、チェックリストにしました。1つでも当てはまったら、それは詐欺です。
- 電話で「あなたは捜査の対象です」と伝えること — 本物の警察は、電話で捜査対象だと告げて資産状況を聞き出すことはありません
- LINEやSNSのビデオ通話で連絡してくること — 警視庁は「警察官がSNSやビデオ通話で連絡を取ることはありません」と明言しています
- 警察手帳や逮捕状の画像を送ったり、画面越しに見せたりすること — 逮捕状は画面で見せるものではありません。画像が見えたら即ニセモノです
- 「捜査中だから誰にも話すな」と口止めすること — 家族にも話させないのは、相談されると詐欺がバレるからです
- 電話でお金の振込や暗号資産の購入を求めること — 警察がお金を要求することは絶対にありません。「資産保護」「口座の確認」もすべて詐欺の決まり文句です
- 画面に出た番号を「信じてください」と言うこと — 発信番号は偽装できます。警察署の番号が表示されても、その表示自体は本人確認の証拠になりません
- 「今すぐ」「この電話を切らずに」と急がせること — 考える時間や相談する時間を与えないのは詐欺の共通点です。本物の用件なら、切ってかけ直しても問題ありません
対処はシンプルです。一度電話を切る。そして自分で調べた警察署の番号か、警察相談専用電話「#9110」にかけ直す。相手から教えられた番号には、絶対にかけ直さないでください。近くの交番や警察署に直接出向いて確認するのも確実な方法です。相談先の選び方は、詐欺の相談窓口7選の記事で詳しくご紹介しています。
ChatGPTを「電話のあとの相談相手」にする方法
怪しい電話を受けた直後は、心臓がドキドキして、冷静な判断がしにくいものです。そんなとき、AI(人工知能)のChatGPTに状況を書き出して整理してもらうと、落ち着きを取り戻せます。使い方は、話しかけるように文章を打つ(または音声入力する)だけです。ChatGPTが初めての方は、高齢者のためのChatGPT入門の記事から始めてみてください。
そのままコピーして使える指示文(プロンプト)を5つご用意しました。
指示文1: 電話の内容が詐欺かどうか整理してもらう
さっき警察を名乗る電話がありました。内容は「(例: 口座が犯罪に使われている、LINEのビデオ通話で話したい、と言われた)」です。これは詐欺の可能性が高いですか。警察庁が案内している詐欺の特徴と照らして、当てはまる点を箇条書きで教えてください。
指示文2: 家族に知らせる文章を作ってもらう
警察を名乗る不審な電話を受けました。家族に状況を知らせるLINEの文章を、心配させすぎない落ち着いた言葉で3行くらいで作ってください。「電話は切った」「お金は払っていない」「#9110に相談する予定」という内容を入れてください。
指示文3: 断り方の練習相手になってもらう
警察官を名乗る詐欺電話を断る練習をしたいです。あなたが詐欺師の役、私が断る役です。私が「電話を切って警察に確認します」ときっぱり言えるように、短い会話の練習に付き合ってください。
指示文4: 我が家の「電話ルールカード」を作ってもらう
高齢の家族向けに「警察を名乗る電話が来たときのルール」を、電話の横に貼れる紙1枚にまとめてください。「一度切る」「#9110にかけ直す」「お金の話が出たら詐欺」など、大きな字で読みやすい箇条書きでお願いします。
指示文5: 不安な気持ちを整理してもらう
詐欺らしい電話を受けてから、また かかってくるのではと不安です。今日からできる備えを、費用のかからない順に5つ、やさしい言葉で教えてください。
1つ注意があります。ChatGPTに相談するときは、自分の名前・住所・口座番号などの個人情報は書かないでください。また、ChatGPTの答えはあくまで整理のお手伝いです。最終的な相談は、必ず#9110や警察署などの公的な窓口にしましょう。
スマホと固定電話の備え|警察庁推奨アプリと国際電話ストップ
「電話に出てから見抜く」だけでなく、「詐欺電話がそもそも鳴らない」ようにする備えも進んでいます。
警察庁が初めて認定した無料の詐欺対策アプリ
警察庁は2026年3月、特殊詐欺対策に有効なスマホアプリを「警察庁推奨アプリ」として初めて認定しました。認定されたのは次の2本で、どちらも無料です。
| アプリ名 | 提供元 | 主な機能 |
|---|---|---|
| 詐欺対策 by NTTタウンページ | NTTタウンページ | 詐欺に使われた番号の警告・ブロック、相手の名前表示 |
| 詐欺バスター Lite | トレンドマイクロ | AIなどを使った不審電話の検出・警告 |
警察庁の発表によると、この2本の累計ダウンロード数は2026年6月末で約147.6万件まで増えています。アプリの入れ方が分からない方は、お子さん・お孫さんに「警察庁推奨アプリを入れたい」と伝えて、一緒に設定してもらうのが安心です。
固定電話は「国際電話ストップ」と留守番電話
令和7年(2025年)中に特殊詐欺に使われた電話番号の約75.5%は「+」から始まる国際電話番号でした。海外と電話する予定がないご家庭なら、「国際電話不取扱受付センター」に申し込むと、固定電話の国際電話を無料で丸ごと休止できます。在宅中でも留守番電話にしておく「常時留守電」も、警察が勧める定番の備えです。iPhoneのAIが電話に出てくれる設定や国際電話の止め方は、詐欺電話にAIが出る設定の記事で手順つきで解説しています。
なお、警察庁の統計では、コンビニ店員さんや金融機関の窓口の方の声かけによって、上半期だけで9,685件・108.3億円の被害が防がれています。「誰かに話す」ことが、いちばんの防波堤なのです。
家族(子世代・孫世代)ができること
この記事を読んでいる子世代・孫世代の方へ。ニセ警察詐欺は「誰にも話すな」と口止めするのが特徴なので、被害の途中では親御さんの様子の変化に気づきにくいものです。だからこそ、事前の共有が効きます。
- 週明けの電話で「ニセ警察詐欺」を話題にする: 「警察を名乗る電話が流行ってるんだって。ビデオ通話に誘われたら詐欺らしいよ」と一言伝えるだけで、いざというときの気づきが生まれます
- 「お金の話が出たら、必ず家族に電話」をルールにする: 想定シナリオですが、「警察に口止めされている」と思い込んだ親御さんでも、「お金の話だけは家族に確認する約束」があれば、そこで詐欺が止まります。声そっくりの詐欺への備えとあわせて、家族の合言葉の記事も参考にしてください
- スマホの備えを一緒に設定する: 帰省やビデオ通話の機会に、警察庁推奨アプリのインストールと、留守番電話の設定を一緒にやってしまいましょう。怪しいメールやSMS(ショートメッセージ)への備えはスクショでAI確認の記事が役立ちます
【要注意】よくある失敗パターンと回避策
失敗1: 画面に警察署の番号が出たので信じてしまう
❌ 「表示は03-3581-4321。警視庁の番号だから本物だ」と思い込む
⭕ 発信番号は偽装できます。表示が何であれ、「捜査」「口座」「お金」の話が出たら一度切る。確認は自分で調べた番号か#9110へ
失敗2: 「誰にも話すな」を守ってしまう
❌ 「捜査の秘密だから」と言われ、家族にも黙って指示に従う
⭕ 本物の捜査で、家族への相談を禁じることはありません。口止めされたら、それこそが詐欺のサイン。すぐ家族と#9110に話しましょう
失敗3: 「ちゃんと確認しよう」と相手の教えた番号にかけ直す
❌ 「確認したい」と伝えたら教えられた番号にかけ直し、仲間の詐欺師につながる
⭕ かけ直す番号は、必ず自分で調べる。電話帳・警察署の公式サイト・#9110など、相手の関与しない経路で確認します
失敗4: ビデオ通話の制服と手帳で信じてしまう
❌ 「制服を着て手帳も見せてくれたから本物だ」と安心する
⭕ 本物の警察はビデオ通話で連絡してきません。制服も手帳も逮捕状も、画面越しのものはすべて偽造できると考えてください
よくある質問(FAQ)
本当に警察から電話がかかってくることはないのですか?
落とし物の連絡など、警察から電話がかかってくること自体はあります。ただし本物の警察が、電話で「あなたが捜査対象」と告げたり、お金の移動を指示したり、ビデオ通話に誘導したりすることはありません。不安なら一度切って、自分で調べた警察署の代表番号にかけ直せば確実です。
もうビデオ通話で話してしまいました。どうすればいいですか?
お金を払う前なら、被害はまだ発生していません。すぐに通話をやめ、相手をブロックして、#9110か最寄りの警察署に相談してください。名前や口座情報を伝えてしまった場合も、その旨を警察に伝えれば対処法を案内してもらえます。恥ずかしいことではありません。相談は早いほど有利です。
お金を振り込んでしまった場合は?
すぐに110番または最寄りの警察署へ連絡し、あわせて振込先の銀行にも「詐欺被害の振込をした」と伝えてください。金融機関への連絡が早ければ、口座の凍結などで被害金の一部が戻る可能性があります。2026年6月からは、被害金を素早く追跡・凍結するための官民の新しい枠組みも動き始めています。
詐欺対策アプリを入れれば完全に防げますか?
残念ながら「完全」ではありません。アプリは詐欺に使われた番号の警告・ブロックに強みがありますが、新しい番号からの電話は通り抜けることがあります。アプリで入口を減らしつつ、この記事の「7つのこと」で中身を見抜く。この二段構えがおすすめです。
まとめ|きょうからできる3つのアクション
- きょうやること: 「本物の警察は、ビデオ通話・手帳の画像・お金の話をしない」の3点を声に出して覚える。電話の横に「一度切って#9110」とメモを貼る
- 今週中: 家族に「ニセ警察詐欺が増えているらしい」と話題を共有し、「お金の話が出たら必ず家族に確認」のルールを決める
- 今月中: スマホに警察庁推奨アプリ(詐欺対策 by NTTタウンページ/詐欺バスター Lite)を入れる。固定電話は国際電話の休止と常時留守電を検討する
ニセ警察詐欺は、半年で507.9億円という大きな被害を出していますが、手口の型は決まっています。「本物の警察がしない7つのこと」を知っているだけで、電話の途中で「あ、これだ」と気づけます。きょう覚えたことを、ぜひご家族にも話してみてください。その一言が、誰かの被害を防ぎます。
次回予告: 次の記事でも、季節の手続きや暮らしに役立つスマホ・AIの使い方を、やさしい手順でご紹介していく予定です。
参考・出典
- 令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値) — 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ(参照: 2026年8月)
- ニセ警察詐欺に注意! — 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ(参照: 2026年8月)
- ニセ警察官とのビデオ通話 — 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ(参照: 2026年8月)
- 警察官等をかたる詐欺 — 警視庁(参照: 2026年8月)
- 警察庁推奨アプリ — 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ(参照: 2026年8月)
- みんなでとめよう!!国際電話詐欺 #みんとめ — 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ(参照: 2026年8月)
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