この記事の要点
- 家に手すりを付ける工事や、段差をなくす工事は、介護保険の給付の対象になります。厚生労働省は「在宅介護を重視し、高齢者の自立を支援する観点から、福祉用具導入の際必要となる段差の解消や手すりの設置などの住宅改修を、介護給付の対象としております」と説明しています(厚生労働省「福祉用具・住宅改修」)。
- 上限は20万円です。 八王子市の公式案内は「支給限度基準額:20万円(20万円が上限で、そのうち1~3割が自己負担です)」と書いています(八王子市「介護保険居宅介護(介護予防)住宅改修費の支給制度」)。
- 要介護度が重くても軽くても、上限は同じ20万円です。 同じ案内に「要介護度による支給限度基準額の違いはありません」とあります。
- 対象になるのは6種類の工事だけです。 「手すりの取付け」「段差の解消」など、厚生労働省が挙げている6つに当てはまるかが最初の関門になります。
- いちばん大事なのは、工事を始める前に申請することです。 名取市の案内は「事前申請が無い場合は、原則として住宅改修費を受給することができなくなりますので、ご注意ください」と念を押しています(名取市「介護保険住宅改修費の受給には「事前申請」が必要です」)。
- 20万円は一度に使い切らなくてもかまいません。 八王子市の案内には「数回に分けて住宅改修を行うことも可能です」とあり、「手すり5万円→段差10万円→扉5万円」という例が添えられています。
- 支払い方は2通りあります。いったん全額払って後から戻る「償還払い」と、自己負担分だけ払う「受領委任払い」です(北九州市「介護保険住宅改修費の支給」)。
介護保険の住宅改修とは、どんな制度か
「介護保険は、ヘルパーさんやデイサービスに使うもの」と思っている方が多いのですが、家を直す工事にも使えます。まずそこを押さえてください。

手すりや段差のための工事に、介護保険が使える
厚生労働省のページには、こう書かれています。
在宅介護を重視し、高齢者の自立を支援する観点から、福祉用具導入の際必要となる段差の解消や手すりの設置などの住宅改修を、介護給付の対象としております。
つまり、家で暮らし続けるために必要な工事なら保険から出るという考え方です。廊下に手すりがない、玄関の上がり框(あがりがまち)が高い、風呂場の床が滑る。こうした「家のつくりのせいで動きにくい」部分を直す工事が対象になります。
使えるのは、介護保険の要介護・要支援の認定を受けている方です。八王子市の案内では、対象者は「介護保険で要介護・要支援の判定を受けた方のうち、八王子市が必要と認めた方」とされています。認定を受けていない場合は、まず認定の申請が先になります。
対象になるのは6種類の工事だけ
ここが最初の関門です。「家を直せばなんでも出る」わけではありません。厚生労働省が給付対象として挙げているのは、次の6つです。
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え
- 上記の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
3番目は言い方が硬いですが、要するに滑りにくい床材に張り替えることです。4番目は、重い開き戸を軽い引き戸に替える、あるいは扉を撤去する工事を指します(八王子市の案内では「引き戸等への扉の取替え(扉の撤去を含む)」と書かれています)。5番目は、和式便器を洋式便器に替える工事です。
6番目の「付帯して必要となる」というのは、本体の工事をするために避けられない工事のことです。たとえば手すりを付けるために壁を補強する、といったものがここに入ります。
要介護度が違っても、上限は同じ
介護保険のサービスは、要介護度が重いほど使える枠が大きくなる仕組みです。ところが住宅改修は違います。
八王子市の案内は「要介護度による支給限度基準額の違いはありません」と明記しています。北九州市の案内も「要介護状態区分に関わらず、支給限度基準額は20万円」としています。要支援1の方でも要介護5の方でも、上限は20万円です。
さらに、同じ家に対象となる方が2人いる場合は別枠になります。八王子市の案内には「1つの住宅に複数の要介護者等がいる場合、それぞれの方に支給限度基準額20万円が適用されます」とあります。ご夫婦ともに認定を受けているなら、合わせて40万円分の枠があるということです。
工事の内容を家族で相談するときの整理のしかたは、【2026年最新】シニアのバリアフリーリフォームをChatGPTで|介護保険と補助金の相談7ステップにまとめています。
手順1〜3|対象工事を確かめ、理由書と見積書をそろえる
ここから実際の段取りです。順番を入れ替えると、あとで保険が使えなくなることがありますので、この並びのまま進めてください。

手順1|対象の工事か確かめる
まず、やりたい工事が先の6種類に当てはまるかを見ます。ここで外れていると、あとの手続きをいくら丁寧にやっても支給されません。
判断に迷いやすいのは、次のようなものです。
- 玄関前のスロープ → 据え付ける工事なら「段差の解消」に入りますが、置くだけのものは対象外(北九州市の案内で対象外の例として挙げられています)
- 浴室の床の張り替え → 滑りにくくする目的なら3番目に入りますが、古くなったから替えるだけでは対象外
- 便器の交換 → 和式から洋式なら5番目。洋式から新しい洋式への交換は目的次第
「これは入るのだろうか」と思ったら、自分で判断せず窓口に聞くのが確実です。八王子市のように、市が「手引き」や「事例集」をPDFで公開している自治体もあります。
手順2|ケアマネジャーに相談して理由書を作ってもらう
対象になりそうだと分かったら、次はケアマネジャーへの相談です。この工事が必要だという書類を、自分では書けません。
厚生労働省の案内は、手続きをこう説明しています。
住宅改修事業者の方に工事内容を相談するとともに、ケアマネジャーの方等に住宅改修が必要な理由書を作成していただいた上で、施工前と施行後にそれぞれお住まいの自治体に申請をしてください。
ここに出てくる「住宅改修が必要な理由書」が、申請書類の核になります。どこがどう不便で、この工事でどう変わるのかを書いてもらう書類です。ケアプランを作ってもらっているケアマネジャーが窓口になります。
ケアマネジャーがまだ決まっていない方は、先に地域包括支援センターに相談してください。介護保険の枠組みそのものを整理しておきたい方は、【2026年9月】65歳以上の介護保険料はいくら|10月に変わるもあわせてご覧ください。
手順3|施工事業者に見積書を出してもらう
理由書と並行して、工事をする業者を決めて見積書をもらいます。
見積書は申請に添える必須書類です。名取市の案内では、事前申請に出すものとして「工事費見積書」「住宅改修が必要な理由書」「改修前の住宅の状況が分かる写真」「改修の予定状況を記した図面」の4点が挙げられています。写真と図面は業者が用意してくれることが多いので、依頼するときに「介護保険の住宅改修で申請します」と伝えておいてください。
このとき一つ確かめたいことがあります。受領委任払いを使いたい場合は、業者が市と契約しているかどうかです。八王子市の案内には「受領委任払いは八王子市と契約を結んだ改修業者でなければなりません」と補足があります。契約していない業者だと、いったん全額を立て替える形になります。
手順4〜5|着工前に申請する・工事と写真
ここが制度でいちばん間違いが起きるところです。工事を先に始めてしまうと、保険が使えなくなります。

手順4|着工前に市区町村へ事前申請する
名取市の案内は、はっきりこう書いています。
改修工事をする前に市に「事前申請」をすることが必要です
そして、
事前申請が無い場合は、原則として住宅改修費を受給することができなくなりますので、ご注意ください
八王子市も、その他の条件として「市へ事前に申請し、改修計画の確認を受けること。(着工後の申請は制度の対象となりません。)」と書いています。
「業者さんが来てくれる日が決まってしまったから、先に工事だけ」という進め方は、いちばん避けたい形です。業者の日程を押さえる前に、窓口へ相談する。この順番だけは守ってください。
もう一つ、時期の条件があります。八王子市の案内には「認定有効期間内の改修であること」とあります。要介護認定の有効期間が切れる前かどうかも、あわせて確かめておきます。
手順5|工事をして、改修後の写真と領収書をそろえる
市から改修計画の確認が取れたら、工事に入ります。工事が終わったら、支給を受けるための書類をそろえます。
必要になるのは主に、領収書と改修後の写真です。名取市の流れでは、工事の実施・完了のあと「市へ領収書などを提出(事後申請)」があり、そのあとに「住宅改修費の支給」となっています。手順2で引いた厚生労働省の案内も「施工前と施行後にそれぞれお住まいの自治体に申請をしてください」と、申請が2回あることを示しています。
改修前の写真は事前申請で出していますから、同じ場所を同じ角度から撮った改修後の写真が求められます。撮り忘れると撮り直しができません。工事の日に業者へ「改修後の写真もお願いします」と伝えておくのが安全です。
なお、工事の途中で予定が変わった場合は、そのままにせず窓口へ連絡してください。八王子市の案内には、着工後に入院や死亡があった場合は「入院・死亡までに完成した部分のみが対象となります」という記載もあります。
手順6〜7|支給の受け取り方と、20万円の残り
工事が終わったあとの話です。お金の流れと、20万円の使い方を押さえておきます。

手順6|償還払いと受領委任払いを選ぶ
住宅改修費の支払い方は2通りあります。北九州市の案内はこう説明しています。
- 受領委任払い:「事業者に保険給付分の受領を委任し、自己負担分のみ支払う」方式
- 償還払い:「全額自己負担後、後日給付分が返金される」方式
たとえば工事費が20万円で自己負担が1割の方なら、受領委任払いなら窓口で払うのは2万円。償還払いなら、いったん20万円を払って、あとから18万円が戻ってきます。手元のお金の負担が軽いのは受領委任払いです。
ただし前に書いたとおり、受領委任払いは市と契約した業者でなければ使えません。自治体によって仕組みの有無も違いますので、事前申請のときに窓口で確認してください。
自己負担が1割か2割か3割かは、介護保険負担割合証に書かれています。町田市の案内では、負担割合証は「毎年7月中旬ごろに新しい介護保険負担割合証を発送します」とされ、適用期間は「8月1日から翌年7月31日」です(町田市「費用負担割合について(介護保険負担割合証)」)。八王子市の案内には「原則として領収書記載日時点における負担割合を適用します」とあるので、工事代金を払った日の割合で計算されます。
手順7|20万円の残りと、リセットされる2つの場合
20万円は一度に使い切る必要がありません。八王子市の案内には、こうあります。
数回に分けて住宅改修を行うことも可能です。
(例:手すり5万円→段差10万円→扉5万円)
まず手すりだけ付けて、暮らしてみてから次を考える、という進め方ができます。急いで全部やらないほうが、必要な工事を見きわめられます。
20万円を超えた分は全額自己負担です。八王子市は具体例を載せています。改修費用が25万円で負担割合が1割の方なら、自己負担は「20万円の1割の2万円と20万円を超えた5万円の合計7万円」になります。
そして、20万円の枠がもう一度使えるようになる場合が2つあります。
- 「介護の必要の程度」の段階が、初回の住宅改修の着工日から3段階以上上がった場合
- 転居した場合
八王子市の案内では、この2つの例外は「それぞれ同一対象者・同一住宅について1回だけ適用されます」とされ、さらに「以前の住宅改修について支給限度基準額の残額があっても持ち越されません」と書かれています。残額は繰り越されないという点は見落としやすいので覚えておいてください。
対象にならない工事と、自治体で違うところ
最後に、つまずきやすいところをまとめます。

対象にならない工事の例
北九州市の案内は、対象外となるものの例を挙げています。
- 福祉用具として貸し出される既存の手すり
- 置くだけのスロープ
- 動力による段差解消機(機械で段差を上下させるもの)
- 老朽化による張り替え
- 滑り止めマットを敷くこと
共通しているのは、「工事ではないもの」と「介護のためではないもの」は外れるという点です。置くだけ、敷くだけのものは福祉用具の側で扱われます。古くなったから直す工事も、介護を理由にした改修とは見なされません。
手すりを買うか工事で付けるか迷ったときは、ケアマネジャーに両方の見積もりを出してもらうと比べやすくなります。福祉用具そのものの選び方については、【2026年最新】補聴器・メガネ選びをChatGPTで相談|失敗しない7つのポイントで考え方の一部に触れています。
住宅と本人についての条件
工事の内容が合っていても、家や本人の状況で対象外になることがあります。八王子市の案内から挙げると、次のとおりです。
- 住民票上の住所の住宅のみが対象。「一時的に身を寄せている住宅や住民票を移していない場合は対象外です」
- 本人の所有でない家は所有者の承諾書が必要。共有名義なら全員の承諾書が必要
- 施設入所中・入院中は改修できないが、「退所、退院を前提とした改修は可能」
- 外泊のための改修はできません
- 家族が自分で工事した場合は「材料費のみが支給対象」
親の家を直すつもりで、子の住所で申請しようとして止まる例があります。申請するのは、認定を受けた本人が住民票を置いている家です。
自治体で違うところ
制度の骨格は全国共通ですが、細かいところは自治体ごとに違います。ここまで引いてきた八王子市・名取市・北九州市・町田市の案内でも、必要書類の名前や様式はそれぞれ異なっていました。
違いが出やすいのは次の3点です。
一つ目は書類の名前と数。「事前届出書」と呼ぶ市もあれば「事前申請書」と呼ぶ市もあります。承諾書や図面の様式も市ごとに用意されています。
二つ目は受領委任払いの扱い。制度がある市でも、契約業者に限るという条件が付きます。
三つ目は市独自の上乗せ制度。八王子市には「高齢者自立支援住宅改修給付事業」があり、案内には「介護保険住宅改修費は高齢者自立支援住宅改修給付事業の住宅設備改修の給付と併用可能です」と書かれています(給付には要件があります)。要介護認定で非該当だった方向けの制度も用意されています。お住まいの市区町村にも似た制度があるかは、窓口で必ず聞いてください。
高齢者向けの補助制度を自分で調べるときの探し方は、【2026年最新】サポカー補助金と後付け安全装置|65歳以上の調べ方で扱っています。
よくある質問
Q. 手すりを1本付けるだけでも使えますか。
A. 使えます。八王子市の案内は「数回に分けて住宅改修を行うことも可能です」として「手すり5万円→段差10万円→扉5万円」という例を挙げています。小さい工事から始めてかまいません。ただし、その1本の工事についても事前申請が必要です。
Q. 要支援1でも20万円使えますか。
A. 使えます。八王子市の案内に「要介護度による支給限度基準額の違いはありません」とあり、北九州市の案内も「要介護状態区分に関わらず、支給限度基準額は20万円」としています。
Q. もう工事を始めてしまいました。あとから申請できますか。
A. 難しいとお考えください。八王子市の案内は「着工後の申請は制度の対象となりません」、名取市の案内は「事前申請が無い場合は、原則として住宅改修費を受給することができなくなります」としています。まずは市区町村の窓口に事情を伝えて相談してください。
Q. 工事が20万円を超えたら、どうなりますか。
A. 超えた分は全額自己負担です。八王子市の例では、改修費用25万円で負担割合1割の方の自己負担は「20万円の1割の2万円と20万円を超えた5万円の合計7万円」と示されています。
Q. 自己負担が1割か2割かは、どこで分かりますか。
A. 介護保険負担割合証に書かれています。町田市の案内では、毎年7月中旬ごろに新しい証が発送され、適用期間は8月1日から翌年7月31日です。八王子市の案内では「原則として領収書記載日時点における負担割合を適用します」とされています。
Q. 引っ越したら、また20万円使えますか。
A. 転居した場合は例外として認められています。ただし八王子市の案内では「同一対象者・同一住宅について1回だけ適用されます」とされ、「以前の住宅改修について支給限度基準額の残額があっても持ち越されません」と書かれています。取り扱いは市区町村に確認してください。
Q. 賃貸住宅でも工事できますか。
A. 所有者の承諾書があれば申請の対象になります。八王子市の案内には「改修する住宅が利用者本人の所有ではない場合、所有者の承諾書が必要になります」とあります。大家さんや管理会社への相談が先になります。
Q. どの工事が対象かを、AIに聞いてもよいですか。
A. 下調べには使えますが、最終の判断には使わないでください。対象かどうかは市区町村が改修計画を確認して決めます。AIに聞くなら「窓口で確認すべきことを箇条書きにして」といった使い方が向いています。制度の可否や金額は、必ず公式の案内と窓口で確かめてください。
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